講師:神戸市御影「カウンセリング ふくろう」
カウンセラー 宇田 百合子先生
うつ状態(うつ病)とは
「憂うつな気分が強く、物事に消極的になり、思考や活動性の低下を引き起こした」気分障害の状態を指す。
うつ状態の症状
@本人の感覚としては気分が憂うつになり物事に興味がわかなくなる。
A物事をするのも臆病になり、自分では根気や決断がなくなったように感じ 物忘れがひどいなど、本を読んでも頭に入らない気がする。
B自分の能力や仕事振りに対する自信をなくすことで「過去」についての
後悔ばかりが強くなり「未来」がない感じを覚える。
C身体的には殆どの場合、睡眠と食欲に影響が見られる。
D睡眠については、午前3時や4時といった早朝に目が覚めてしまうことが 多く熟睡間も少なくなる。
E食欲は通常低下し、食べても味がないように感じられる傾向がある。
便秘を伴うこともしばしばある。
F頭が重い感じや肩こり・動悸・のどの渇き・腰痛・性欲の低下なども起こる
G症状は、一日の中でも特に朝がひどく、夕方から夜にかけて軽くなる
パターンが多い。
H会社や家族に「申し訳ない」という自責感・罪悪感のために
自殺を考えることもある。不安やイライラ感もよくみられる。
I人前では平素のその人と変わりなく振舞って、一見したようでは、うつ状態
とはわかり難いことが少なくない。したがって、周りの人には症状が
でているときは、ただサボっているだけにしか見えないことがある。
「仮面うつ病」とは
うつの感情面が目立たず身体不調についての訴えが表面に出ている場合をいう
うつ状態になりやすい人の性格特徴と発病の要因
ひどいうつ状態に陥りやすい性格としては、2つのタイプが注目されている
◎「普段は、人付き合いがよく、親切で親しみやすいタイプ」
◎「義務責任感が強く几帳面・完全主義で仕事熱心なタイプ」
うつ状態は何らかの契機なしに起こってくることがあるが、「身体の病気」
「転居」「親しい人との別れ」「昇進」「退職」などが引き金になる場合も
少なくない。
うつ状態の治療
うつ状態は一部の特別な人だけに起こる病気でなく、誰にでも起こりえるが、適切な治療により必ずよくなるものである。基本は内科の病気と同じで、早期発見・早期治療が効果的である。
老年期うつ病の特徴
老年期は様々な原因からうつ状態を引き起こしやすく、また、老年期におこる
うつ状態は一般的に見られるうつの症状と違う面があるため、その特徴を理解する必要がある。
@うつ気分の訴えよりも、身体の不調や痛みを訴えることが多く、「うつ」と 気づかれにくい。
A意欲の低下・判断力・注意力の低下がみられる。精神運動抑制と呼ばれる症 状であるが、そのため物忘れが激しい、ぼんやりしている、返事をしないと いったことが起きて痴呆症と間違えられることがある。
B食欲低下による体重減少がみられる。高齢になると身体に症状が出やすくな る。
C妄想化が起きやすい。うつ病に伴う妄想には、身体不調に関する心気妄想や 自分に罪があるという罪業妄想、経済的な不安に関する貧困妄想などがある
D一般的には「うつ病」ははっきりした原因が不明なものが多いが、老年期の うつ病は転居や身近な人の死のような生活上の様々な出来事や発病や身体の 不調がきっかけとなって発病することが多い。
E自殺の危険性がある。老年期は自殺の多い時期でもあるが、気づかれていな いうつ病も原因でないかと言われている。
その他うつ症状
うつ病以外の原因でも、うつ症状が起こることがある。うつ症状があるから、即「うつ病」だ。というのではなく、ほかの原因がないかどうかを確認することが必要である。
(1)脳循環障害に伴う身体的不調からおきるうつ状態
明らかな器質性疾患があり、それによる頭重・耳鳴り・肩こり・めまい ・歩行障害・睡眠障害の訴えがある。抑うつ気分・意欲の低下・不安・
焦りなどが重なることがある。この場合は、器質性疾患に対する治療と 身体的な援助が重要である。
(2)痴呆症の初期症状に起こるうつ状態
アルツハイマー型老年痴呆など痴呆症の初期段階でも、抑うつ・意欲の 低下・不機嫌・不安・焦りなどの症状が現れることがある。
痴呆の進行に伴ってうつ状態は消失し、ほかの痴呆症状に移る。
(3)身体疾患・心理的ショック・薬物の影響による うつ状態
うつ状態を引き起こした原因がはっきりしているため、原因を除去し、 適切な対応をすることで比較的改善が早い。
※脳循環障害とは
さまざまな(血圧低下・血液異常・脳梗塞など)によって、脳の血液の 流れが著しく悪くなること。
井上 勝也「老人の心理と援助」より
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